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パレスシート® 技術資料

技術資料

設計・施工マニュアル(重機足場篇)

要約

 パレスシート工法は、軟弱地盤上での荷重分散と不同沈下の抑制を目的とした工法で、シートと格子状のジャケットを組み合わせ、ジャケット内にモルタルを充填することで剛性を高める仕組みを採用している。 従来のジオテキスタイルは補強効果が不十分で不同沈下が発生しやすかったが、この工法では格子構造による補強効果で安定性を向上させる。もともとは埋め立て工事の超軟弱地盤補強を想定していたが、 現在では仮設道路や田んぼ、重機足場の安定化にも広く利用されている。
 セメント固化改良と比べると、粉塵が発生せず環境負荷が低いこと、撤去後の砕石の再利用が可能で産業廃棄物が少ないこと、騒音が抑えられ作業性が向上することが大きな利点となる。 また、ジャケットの格子間隔や直径を調整できるため、地盤の状況に応じた柔軟な設計が可能である。
 設計では、地盤のN値や支持力を評価し、適切な格子ピッチや砕石層厚を決定する。鉄道や道路では、K30値やCBR(カリフォルニア支持力比)を基準に計算し、 重機足場の場合は地盤解析ソフトGAMESを用いて沈下量や応力分布を解析する。施工は基面整形、シート敷設、モルタル注入・養生、砕石敷設・転圧、品質試験の順で行われ、施工後は流動性試験や圧縮強度試験を実施し、品質を確認する。
 この工法は、不同沈下の抑制に優れ、施工が容易で環境負荷も低いため、鉄道・道路の安定化や工事用道路、重機足場の補強に適している。設計ノモグラムを活用することで、最適な設計が可能になり、安全性と耐久性を確保しながら効率的な施工が実現できる。

詳細補足資料

設計・施工マニュアル(重機足場篇)
設計・施工マニュアル(重機足場篇)
補足資料(重機足場篇)
補足資料(重機足場篇)

論文

水田上の仮設道路を目的としてパレスシート工法の実証実験

要約

 この論文は、軟弱地盤である水田(田んぼ)上に仮設道路を施工するための「パレスシート工法」の有効性を実証した研究である。特に、地震や災害時の緊急対応として、田んぼのような軟弱地盤に迅速かつ効率的に仮設道路を整備する方法を検証している。
 パレスシート工法は、ジオテキスタイルのシートを格子状のジャケットに固定し、その内部に流動化固化剤を注入して補強枠を形成する技術である。従来の地盤改良では砕石を投入する方法が一般的だが、本工法ではそれを必要とせず、短期間で施工できる点が大きな特長である。
 本研究では、長野県豊丘村の休耕田を実験地として選定し、重機を用いた施工性の確認試験と安定走行試験を実施した。まず、パレスシートを敷設し、その上に格子状ジャケットを展開した後、流動化固化剤を注入して補強枠を形成した。施工は短時間で完了し、特別な設備を必要とせず、簡便な手順で実施可能であることが確認された。
 その後、120kNの重機(バックホウ)による走行試験を行い、12回の往復走行でも地盤に大きな変状が生じないことが確認された。さらに、撤去作業も迅速に完了し、施工後の地盤には植物が再生しており、環境への影響が少ないことも確認された。
 以上の結果から、パレスシート工法は、地盤改良の手法として、田んぼなどの軟弱地盤上での重機を用いた仮設道路施工において、従来の砕石敷設や地盤固化処理を必要とせず、迅速かつ効率的に整備できる有効な技術であることが実証された。特に、災害復旧時の一時的な道路整備に適用できる可能性が高く、今後はさまざまな地盤条件に対応するためのデータ収集が求められる。  

詳細

論文1

格子ジャケットを用いたシート工法による軟弱地盤上の仮設道路施工

要約

 この論文では、軟弱地盤上における仮設道路の施工に適用可能な「格子ジャケットを用いたシート工法」の有効性を詳細に検証している。本工法は、筒状の織物(ジャケット)に流動性の高いモルタルを充填し、補強枠を形成することで荷重を均等に分散し、不同沈下を抑制する構造である。これにより、従来の地盤改良手法と比較して、より安定した施工が可能となる。
 これまで本工法は、水田(たんぼ)上でのトラフィカビリティ向上試験や鉄道路床の施工試験、河川護岸工事における仮設道路の施工などで活用されてきたが、本研究では特に深さ10mにわたってN値の低い軟弱地盤が広がる地域において、1年以上使用する仮設道路の施工事例を対象とした。そのため、施工後の長期間にわたる追跡調査を実施し、その効果を詳細に検証した。  施工地は河川拡幅工事に伴い、橋梁の架け替えが必要となった場所であり、工事期間中に使用する仮設道路の設置が求められた。ボーリング調査の結果、深さ10mまでN値2以下の腐植土を含む軟弱地盤であることが判明し、適切な地盤改良工法を選定する必要があった。そこで、砕石置換工法、ジオテキスタイルを用いたシート工法、格子ジャケットを用いたシート工法の3種類を比較検討した。砕石置換工法は比較的安価であるものの、砕石が耕土に混ざることで原状復帰が困難になり、 不同沈下の可能性が高いという問題があった。一方、ジオテキスタイルを用いたシート工法は砕石の混入を防ぐが、セメント改良を施すため、原状復旧時に大量の耕土入れ替えが必要になる。最終的に、不同沈下の抑制効果が高く、原状復帰が容易で施工性にも優れた「格子ジャケットを用いたシート工法」が採用された。
 施工では、まず地表から770mm掘削し、整地した上でシートとジャケットを敷設し、ジャケット内部にモルタルを充填した。モルタル硬化後、200mmの砕石を敷均して転圧し、その上にさらに520mmの砕石を敷設して路床を形成した。その後、平板載荷試験を実施し、施工後の地盤支持力を確認した。本工法の特徴として、ジャケットの格子構造が荷重を分散することで、従来のバンプーシート工法と比較して不同沈下を抑制し、より安定した仮設道路の形成が可能である。また、施工手順が簡便であり、工期の短縮にも貢献することが確認された。
 施工後の追跡調査では、供用開始から100日後と190日後にレベル測量を実施し、沈下量の変化を詳細に調査した。その結果、右岸側で最大9.4cmの沈下が確認され、左岸側と比較して沈下量が大きいことが判明した。さらに、ポータブルコーン貫入試験を実施し、地盤の強度を評価したところ、右岸側の地盤支持力が左岸側よりも低いことが明らかとなった。右岸側の土質試験では、間隙比が左岸側の1.4倍、圧縮指数が1.6倍と、より圧密沈下しやすい地盤特性を有していた。また、橋梁工事の影響により、右岸側には左岸側よりも大きな荷重が作用していたことも沈下量の差に影響したと考えられる。これらの調査結果から、格子ジャケットを用いたシート工法は一定の不同沈下抑制効果を有しているものの、軟弱地盤の性質によって沈下の進行に差が生じることが示唆された。
 本研究を通じて、格子ジャケットを用いたシート工法が地盤改良の一手法として、軟弱地盤における仮設道路の施工に適用可能であることが確認された。特に、砕石単独では得られない安定性が確保され、施工後の支持力が十分であることが実証された。ただし、地盤の特性によって沈下挙動に差が生じることが明らかになったため、施工前の詳細な地盤調査が不可欠である。今後も継続的な追跡調査を実施し、撤去時における格子ジャケットの耐久性を詳細に評価し、さらなる改良の可能性を検討していく予定である。

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論文2

格子状補強シート工法による軟弱地盤の路床改良

要約

 この論文では、軟弱地盤上における仮設道路の施工に適用可能な「格子状補強シート工法」の有効性について詳しく報告している。特に、水田や農業関連施設の補修時には仮設道路が必要となるが、水田の耕作土は支持力が低く、そのままでは路床として利用できない。従来の地盤改良方法としては、セメントや石灰を用いた安定処理工法があるが、これらは土壌の性質を変えてしまうため、農地としての再利用が難しくなるという問題があった。そこで本研究では、耕作土を改良せずに軟弱地盤の支持力を向上させる手法として、「格子状補強シート工法」を採用した。
 本工法は、シートの上に筒状織物を配置し、その内部にモルタルを充填して格子状の補強枠を形成する構造である。この補強枠内に砕石を敷設することで、強固な路床を構築することが可能となる。本工法は、河川敷や畑地での移動式クレーンの転倒防止対策などにも適用された実績があり、短期間で施工できるうえに、十分な支持力を確保できる点が特長である。今回の施工では、設計ノモグラムを用いて工法の適用性を評価し、施工後に平板載荷試験を実施してその妥当性を検証した。
 施工地は、4m近くの粘土層が堆積し、その下に固結粘土や礫混じり砂が分布する軟弱地盤の水田であった。仮設道路撤去後に農地として再利用する必要があるため、セメント改良は行わず、適切な地盤改良方法として砕石置換工法や敷鉄板による養生も検討された。しかし、砕石置換工法は掘削により耕作土が攪乱され、農作物の生育に影響を与える可能性がある。また、敷鉄板養生は施工に時間がかかり、農閑期の短期間では適用が難しいと判断された。そのため、短期間で施工が可能で、かつ支持力の向上が期待できる「格子状補強シート工法」が採用された。
 設計においては、格子状補強枠の実大実験および解析結果に基づく設計ノモグラムを使用し、格子寸法を1m×2mとし、その上に30cmの砕石を敷設する構造とした。設計ノモグラムの計算結果から、この構造で施工した場合、地盤反力係数K30が40MN/m³確保できると推定された。また、「地盤調査の方法と解説」に基づき、CBR(カリフォルニア支持力比)を算出した結果、K30=40MN/m³のとき室内CBRが2.5、現場CBRが3.75と推定され、最終的な路床設計はCBR=3.0で行われた。
 施工では、既設道路の通行を一時的に制限し、新たに仮設道路を敷設する形で実施された。まず、地盤の高さを調整し、その上に土木シートを敷設した後、筒状織物を配置して格子を形成した。次に、筒状織物内に特殊モルタルを充填し、所定の強度に達したことを確認した後、砕石を敷均し転圧を行い、最終的な路床を完成させた。施工面積は846㎡に及び、施工時にはモルタルのフロー値や圧縮強度の確認試験を実施し、品質管理を徹底した。
 施工後の設計妥当性を検証するため、平板載荷試験を実施した。試験は格子の影響を受けないよう、砕石を敷設する前にあらかじめ測定位置を決定し、適切な試験環境を確保した。その結果、K30の測定値は77.2MN/m³となり、設計値である40MN/m³を大きく上回っていた。これにより、格子状補強シート工法による地盤改良が十分な支持力を発揮することが確認され、設計ノモグラムの有効性も実証された。
 本研究では、「格子状補強枠を用いたシート工法」が軟弱地盤における仮設道路施工に適用可能であることを示した。本工法は、不同沈下を抑制し、短期間で施工できるうえ、撤去後の原状復帰が容易であるというメリットを持つ。施工後の平板載荷試験でも、期待される支持力を十分に満たす結果が得られたことから、軟弱地盤の路床改良における有効な選択肢となることが確認された。今後もさらなる実証実験を行い、異なる地盤改良条件での適用性を評価しながら、工法の最適化を進めることが求められる。

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論文

タイにおける軟弱地盤状の離岸提を対象とした格子状補強シートによる沈下抑制に関する模型実験と数値解析

要約

 この論文では、タイ湾南部の極めて軟弱な地盤上に建設される離岸堤の不同沈下を抑制するために、「格子状補強シート工法」を活用した新たな地盤改良技術を提案し、模型実験、数値解析、そして実際の試験施工を通じてその有効性を検証している。タイ湾沿岸では、マングローブ林の破壊による天然防波堤の消失に伴い、深刻な海岸浸食が発生している。この問題を防ぐために離岸堤が設置されているが、沿岸部の軟弱地盤にはN値1未満の粘土層が10m以上堆積しており、離岸堤の不同沈下が大きな課題となっている。2012年にジオテキスタイル製の袋(Geo-Tube)を用いた離岸堤が試験施工されたが、1年間で1m以上沈下し、追加の盛土を行わなければ満潮時に水没する問題が発生した。このような課題を解決するため、より経済的で高効率な不同沈下抑制技術として、格子状補強シート工法の適用が検討された。
 格子状補強シート工法は、直径10cmの筒状織物(ジャケット)に特殊モルタルを充填し、剛性の高い格子状補強枠を形成する地盤改良技術である。このシートを盛土の底部に敷設することで、ジャケットの引張抵抗と特殊モルタルの圧縮抵抗が相互に作用し、盛土全体の曲げ剛性が向上する。その結果、不同沈下を抑制し、地盤表層の安定化が期待できる。本研究では、この工法の効果を定量的に評価するため、模型実験・数値解析・現地試験施工の3段階に分けて検証を行った。
 まず、模型実験では、幅1300mm、高さ310mm、奥行き150mmのアクリル製土槽を用い、珪砂による排水層を設置した上にカオリン粘土を敷設し、軟弱地盤を再現した。粘土層の初期含水比を100%とし、7日間の自重圧密を経て厚さ150mmの地盤を形成した後、盛土を構築し、不同沈下の挙動をレーザー変位計で観測した。この実験では、軟弱地盤上に直接盛土を施工した場合(CASE-1)、ジオテキスタイルを敷設した場合(CASE-2)、格子状補強シートを敷設した場合(CASE-3)の3条件で比較が行われた。その結果、無対策のCASE-1では盛土の天端沈下が最も大きく、軟弱地盤の影響を直接受ける形となった。シート工法であるCASE-2では、ジオテキスタイルの効果により沈下量がCASE-1の約9割程度に低減されたものの、不同沈下の発生は抑えきれなかった。一方、格子状補強シート工法を用いたCASE-3では、沈下量がCASE-1の約4割にまで抑えられ、最も高い不同沈下抑制効果が得られた。さらに、側方流動による地盤の隆起についても測定した結果、無対策のCASE-1では最も大きな隆起が発生したのに対し、ジオテキスタイルを使用したCASE-2では軽量なため浮き上がる現象が発生し、かえって法尻付近の隆起が増大する傾向が確認された。一方、格子状補強シート工法を用いたCASE-3では、シートの剛性により側方流動が抑制されたことが明確に示された。
 実験結果を基に有限要素法(FEM)を用いた数値解析を行い、軟弱地盤の挙動を忠実に再現するために関口・太田モデルを採用し、格子状補強シート工法の不同沈下抑制効果を解析的に検証した。解析結果は実験結果とよく一致し、特にCASE-3における不同沈下抑制効果が明確に示された。これを受け、2017年にタイ湾南部のサムットサコーン県沖合200mの海域で試験施工を実施した。施工範囲は20m×20mで、格子状補強シートを1m×1mの間隔で敷設し、その上に砕石を用いた離岸堤を築造した。試験施工地の地盤は極めて軟弱であり、深さ17mまでN値1未満の粘土層が分布していた。施工後、5年間にわたり天端沈下を計測した結果、離岸堤の沈下量は0.51mに抑えられた。また、数値解析による長期沈下予測では、90%の圧密が施工から9年後に達成され、最終沈下量は0.6m程度と推定された。
 これらの結果から、格子状補強シート工法を用いることで離岸堤の不同沈下を大幅に抑制できることが示された。特に、初期沈下の低減効果が高く、長期間にわたり地盤安定化に寄与する可能性があることが確認された。本研究を通じて、タイの海岸浸食対策として格子状補強シートを活用する新たな地盤改良技術の有効性が実証され、今後さらなる長期観測を継続し、解析精度の向上と工法の最適化を図る必要があると結論づけられた。

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論文4

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